欠田誠のマネキンの世界
第22話 彩色(マネキンのメークなど)の話

 マネキンに色を塗ったりメークを施したりなど、塗装に関わる仕事は彩色を専門に担当する人達が行うというのがマネキン企業での一般的な生産の流れです。これは量産したマネキンを効率よく市場に提供していくための分業方式ですが、別注対応の仕事が多くなってきた今日では原型と彩色の人達が協力し合ってやらなければならない仕事も結構多くなっています。メークはマネキンの最後の仕上げ作業でもあり、また顧客の細かい要請やニュアンスを理解して表現しなくてはならない、とても重要な役割があります。そういう意味では時代の変化やファッションの変化を最も肌で感じながら仕事が出来る(しなくてはならない)セクションでもあります。

 時代の変化と共に彩色の人達の仕事の内容は大きく変わってきました。

 マネキンが店や商品の独自性や、他との差別化をアピールするためのツールとして求められる今日では、多種多様なタイプのマネキンが開発され、同時に彩色の仕事も幅広く多様な表現が求められています。もとより彩色という仕事は、このようなクリエイティブな作業と、いかに早く数をこなすかといった生産性を重視する、異なった内容の仕事を同時に行わなければならない役割を担っていました。かつてマネキンが大量に使われていた、少品種で大量生産の時代では、彩色は、一日に何体、マネキンのメークが出来るか、と言うコピー能力を最も評価された時代がありましたが、今日では多様化された顧客のニーズに対応して行くための、クリエイティブな能力がより求められています。彩色の仕事はマネキンの付加価値を高める仕事でもあります。

 それでは、新たに開発された新作マネキンの彩色はどのようにして成されるのでしょうか。

 原型作家がマネキンを作る時は当然どのような彩色をするかを想定して作ります。マネキンの顔は、原型が出来た時点ではまだ未完成の状態で其処に的確な彩色の表現が加わることによって完成します。其処までは、まだメークの段階ではありません。当然試行錯誤の伴った時間のかかる作業ですが、メークの担当の人達の技術や意見など、協力が得られる事は企業内作家同士のメリットでもあります。彩色には、形を見て新たな表現を発想し、より立体的に顔を完成させるためのセンスと能力が欠かせません。

 油絵の具やアクリル絵の具や化粧品などいろいろな材料を使って表現の可能性を探ります。この段階では後の量産のことは考えません。

 やっと顔が出来上がった後にこの効果をいかに量産に適した方法で表現すれば良いか、彩色の人達の経験と知恵で考えることになります。更にその顔にどのように流行のメークを施すかという作業に進むことになります。

 ヘアーデザインの決定も同じことが言えますが、かつらの生産は外部の専門の工房に依頼しているのが現状だと思います。

 近年、彩色を施した人体彫刻を見かける事が多くなってきました。一方、彩色をしない黒や白色など単色のマネキンが市場で多く使われています。彫刻、フィギュア、人形、マネキン、などそれぞれの表現が渾然として、それぞれの線引きがあまり意味を持たない新しい人体造形の世界を感じます。
写真上段より:
 1)女性の顔は、メークと髪型によって大きく変わる。アオラ(ヤマトマネキン)
 2)マネキンの彩色前と彩色後

 (写真:欠田誠著「マネキン 美しい人体の物語」より)